- このページではネタバレ無しでSwitch版「グノーシア」のレビュー、感想を記述しています
- 物語の結末や登場人物に関する重要な内容には触れていません
- 各ストアのページに記載されている範囲の情報であらすじを紹介しています
「グノーシア」(2022年8月現在)
- 価格:税込2750円
- ジャンル:テキストアドベンチャー/謎解き
- プラットフォーム:Steam/Nintendo Switch/PS Vita
- クリア時間:15時間~
- 開発元:プチデポット
- 初リリース日:2019年6月20日
物語のあらすじ
舞台はSFの世界。主人公はとある宇宙船の乗員です。やっかいなことに、この宇宙船の中にはグノーシア──人を騙し、人間を消し去る存在──が入り込んでいました。
グノーシアは噓をつき、人間になりすまします。誰が敵で誰が味方なのかわからない状況の中、乗員たちは生き残りをかけて議論と投票を行います。
しかし、そんな状況で主人公はループを繰り返すという現象に直面します。主人公はこの宇宙船で生き残り、勝利することを目指しながらループする宇宙の謎を追っていくことになります。
ゲームの概要
「グノーシア」はテキスト中心で進行していくアドベンチャーゲームであり、「人狼系ゲームを1人で何度でも遊ぶことができる」と銘打たれている作品です。
議論と投票は条件を満たすまで毎日行われます。主人公は話し合いの中で「かばう」や「疑う」といった発言や「様子を見る」などの判断をしながらコールドスリープするべきだと思う相手に一票を投じます。
また、乗員たちと交流を深めていくことでイベントが発生することもあります。乗員たちのこと、この世界のことなど、様々なことを知っていくことで物語は進行していきます。
購入前に知っておきたい疑問・質問
「グノーシア」は怖い?ホラー要素やグロテスクな表現はある?
これは私自身が購入前に気になっていたことなのですが、結論から言うとそこまで怖い表現はありません。
パッケージ(またはストアのトップ画像)に描かれているような怖い顔がでてきたり、ゾクッとするような効果音が流れたりはしますが、過激なホラー、ドッキリ要素はないので大丈夫です。
ひとつの基準として、ニンテンドーストアでのCEROレーティングはB(12歳以上)となっており、それ以上の年齢の方がご自身の判断でプレイする分には大きな心配はないと思います。
グロテスクな表現についても過激なものはありません。一部のシーンで流血を表すような演出がありますが、直接的な描写はなく、画面が赤く染まる程度になっています。
人狼ゲームの経験や知識がなくても大丈夫?
全く問題ありません。知識ゼロの状態でも議論の進め方や各役割について理解しながら進められるようなつくりになっています。
おすすめできる人、おすすめしない人
○ SF、ループものが好き
○ ミステリアスなストーリーが好き
○ 構成のしっかりした物語を楽しみたい
○ キャラクターと絆を深めていくゲームが好き
× 対人の人狼ゲームの感覚を味わいたい
× テキスト中心のゲームが苦手
× 動きや画面の変化が少ないゲームはすぐ飽きてしまう
詳しい理由については以下の「良かった点、気になる点」をご参照ください。
良かった点
先が気になる物語 巧みなストーリー構成
「グノーシア」は優れている点が多い作品ですが、評価が高い第一の理由は物語の良さにあると言って差し支えないと思います。
しっかりしたストーリー構成と先が気になるおもしろいシナリオがこのゲームの太い柱となっています。ループの謎からはじまり、次々に謎が出てきて、いったいこれはどういうことなんだと考えながら物語を進めていくのが本当に楽しかったです。
さらにこの作品のすごいところは、議論の意義や人狼における各役割の存在、ループの謎などにしっかりとした理由と設定をはめ込んでいることです。
例えば、「グノーシアは議論なんかやっている間になんで乗員を皆殺しにしないの?」とか「絶対に人間だとわかっている人以外全員コルドスリープすればいいんじゃないの?」といったプレイヤーが抱く当然の疑問にもひとつひとつ答えが用意されています。
「そこはゲームだから」で済ませずに、納得のできる設定をしっかりシナリオに組み込んでくれることでストーリーに信頼性が生まれています。だからこそ、プレイヤーとしても深く物語に入り込めるのだと感じました。
人狼要素をSFのループものに落とし込んだ作品として、これ以上を作るのが難しいくらい見事だなと思います。
深堀りしたくなる14人の個性的なキャラクター
この作品には14人のメインキャラクターが登場します。ループを重ねる中で、ある時は味方として、またある時は敵として、登場人物のさまざまな面を知っていく過程はこの作品の醍醐味です。
皆、個性が強く、意外な過去があったり隠された一面があったりと、どんどんその人物を知りたくなるような魅力を持っています。
議論や投票などの行動にキャラクターごとの傾向が出るのもおもしろい点です。ループを繰り返しながら傾向をつかんで、うまく立ち回るのも楽しみのひとつになっています。
繰り返しプレイに耐えうる懐の深さ
アドベンチャーゲームの大きな弱点が一度クリアしたらモチベーションがガクッと下がることだと思うのですが、「グノーシア」には一度クリアしただけでは遊び尽くしたといえないくらいの楽しみの幅があります。
選択肢が複数あるイベントが多く、主人公の性別が男性か女性かでもイベントや台詞に変化があります。
また、同じイベントでも以前見た時と違う結末になるものがあったり、生き残っているメンバー次第で些細な変化があったりと、2週目以降もいろいろな変化が刺激となってくれます。
イベントばかりに注目しがちですが、議論に関しても本当に深く作りこまれていると思います。
何百何千という繰り返しに耐えうる出来になっているのですが、正直、最初はそのすごさがわかっていませんでした。「議論は定型文の応酬でステータスの殴り合いか」、と最初はちょっと冷めて見ていたんです。
しかし、議論(と投票と襲撃の一連の流れ)を繰り返している間に、それぞれのキャラクターが人間的な思考をして行動しているんだなというのが見えてきたことで、おもしろく感じるようになっていきました。
例えば、「ずっとAをかばっていたBが、急にAを疑いだした。BはAが嘘をついていることに気が付いたらしい」というような推理ができるようになってくると、議論の楽しみがぐっと増します。
また、主人公の能力値をどのように上げていくかによって、議論の楽しみ方を変化させることもできます。例えば、直感を上げて相手が嘘をついているのを見破りやすくしたり、ロジックを上げて相手の発言の矛盾を突けるようにしたりと、立ち回り方は色々です。
さらに、各キャラクターには言動の傾向があるのですが、状況やその時の役割、互いの好感度や疑念のレベルによって絶妙な動きがあり、決まりきった流れにならないのもおもしろいところです。
話し合いの中で見たことがない珍しい展開になることもあり、何百とループを繰り返してきても「こんな展開あるんだ」と新たな発見があることに驚かされます。
洗練されたストレスフリーなゲーム設計
このゲームは操作などの面でも洗練されています。無駄な動作がなくなるようこだわって作られているのだと思います。
特にスゴいと思ったのが、ゲームを開始してすぐにスタート画面が出てくるところです。
すぐスタートできないゲームって意外とありますよね。会社のロゴが何個か出てくるぐらいならいいものの、毎回流れるオープニング映像をスキップして、長いロード画面を経て、スタート画面で「ボタンを押してスタート」的なメッセージが表示されてようやくスタート、みたいなものもよくあると思います。
「グノーシア」の場合はアイコンを押したらスッとスタート画面が出てくるのでストレスを感じません。本当にプレイヤー目線で作られたゲームなんだなと感動しました。
片手操作に対応
Switch版ではジョイコンによる片手持ちでの操作に対応しています。どちらか片方の手にジョイコンを握るだけで全ての操作ができちゃいます。
最初はそのありがたみがイメージできなかったのですが、実はこの片手操作はゴロゴロしながら楽な姿勢でプレイする時にすごく便利なんですよね。
いつでもどこでも、どんな姿勢でも遊べるSwitchの良さを最大限に活かしていて地味に感動しました。
独特なのに飽きのこないBGM
独特のBGMがこのゲームに合っていて、没入感のある雰囲気を作り出しています。
不思議な言語の歌が入っているBGMが特に印象的でした。エレクトロニックな雰囲気を持ちつつもあたたかみがあって、音だけで「グノーシア」の世界観が伝わってくるような印象を持ちました。ループするたびに聞いているのに飽きないのが不思議です。
気になるかもしれない点
序盤の議論と投票での理不尽さ
上の項目でも少し触れましたが、序盤は議論と投票が厳しく、味気なく感じてしまうかもしれません。
ステータスが低いこともあって、敵じゃないのにすぐに疑われて投票されたり、初日の夜にグノーシアに襲撃されて終了したり。この理不尽さにモチベーションが下がる方もいると思います。私もそうでした。
でもそこを乗り越えると長く生き残れるようになり、議論のおもしろさが見えてきますので(詳しくは上記の「繰り返しプレイに耐えうる懐の深さ」の項目に記述)、序盤の不条理は仕方ないと割り切ってしまったほうがいいかなと思います。
対人人狼ゲームとの違い
高い評価を受けている「グノーシア」ですが、対人の人狼ゲームの感覚を求めている方の期待に沿うかどうかは微妙なところのようです。キャラクターが人狼のセオリー通りに動かないことで困惑したという評価も目にしました。
乗員たちの中には理論より感情優先のキャラクターもいます。このゲームでは必ずしも議論と投票が合理的な展開にならないもどかしさも確かにあり、そこをうまく立ち回るというおもしろさもあります。
ひとりでできる人狼風ゲームとしては優秀ですが、対人の人狼ゲームと同じような展開を楽しみたい方は注意が必要かもしれません。
イベントが起きない時の作業感
一部のイベントには、特定の行動や選択がきっかけになるものがあります。
人によっては何も起きないまま何度もループを繰り返すことになり、その作業感からネガティブな印象を持つ場合もあるようです。
とはいえ基本的には色々なキャラクターと触れ合ったり、乗員たちからヒントを聞いたりすることで物語が進行していくので、難しく考えなくても大丈夫かなとは思います。
まとめ
長々と書いてきましたが、一言でいうと非常に満足感のあるゲームです。プレイ時間が長くなればなるほど「よくできているなあ」と思わされる奥深い作品だと思いました。
しかし、称賛の声が多い一方で実は人を選ぶゲームではないかとも思います。
テキストアドベンチャーというジャンルが好きではないという方や、議論の繰り返しにおもしろさを見出せないという方はこのゲームを楽しめない可能性もあるかと思います。そういった方は、購入前に注意点を踏まえた上でよくご検討されることをおすすめします。
長くなりましたがここまでご覧いただきましてありがとうございました!